福岡高等裁判所 昭和60年(ネ)476号 判決 1986年2月26日
控訴人(被告) 平塚省三
右訴訟代理人弁護士 堤賢二郎
被控訴人(原告) 博多地所株式会社
右代表者代表取締役 安部忠昭
右訴訟代理人弁護士 山出和幸
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
一、控訴人は「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は主文同旨の判決を求めた。
二、当事者双方の主張の関係は、次のとおり付加、訂正するほかは原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。
1. 原判決三枚目裏九行目「相殺」とあるを「求償権の消滅」と改める。
2. 同四枚目表一〇行目冒頭から同枚目末行末尾までを次のとおり改める。
「(四) 右転室にあたり、被控訴人と渕上徳子との間で、渕上の被控訴人に対する敷金返還請求権一一五〇万円及び内装等の売買代金債権五五〇万円合計一七〇〇万円を源資として、被控訴人は渕上の福岡相互銀行に対する債務の履行を引受け内金一七〇〇万円の支払に充当する旨、ないしは直接同金額を被控訴人の代位弁済による求償債権に充当する旨の合意が成立し、被控訴人はその後右各債権を受働債権として本件求償債権と対当額で相殺している。従って被控訴人の代位弁済による求償債権二四三六万六一一七円のうち一七〇〇万円については既に主債務者渕上との間で行われた右相殺により消滅していることになる。」
3. 同枚目裏三行目「同(四)事実のうち、」の次に「控訴人主張の合意の存在は否認する。」を挿入する。
4. 同六枚目表七行目末尾に次のとおり付加する。
「控訴人も、自己が連帯保証した契約に基づく主債務者渕上の借入金が、被控訴人の貸店舗の敷金及び店舗の内装等に使用され、その敷金返還請求権及び内装等の売買代金債権が借入金の担保の意味をもつことの利益を受けるべきであるから、右各債権は当然控訴人に対する本件求償債権にまず充当されるべきであり、被控訴人が渕上との間で全く別個の債権にまず充当し、その余を本件求償債権の被控訴人の負担部分に充当するというようなことは信義則に反し許されない。」
三、証拠<省略>
理由
一、当裁判所も、被控訴人の本訴請求を正当として認容すべきであると判断するもので、その理由は次のとおり付加、訂正するほかは原判決の説示するところと同じであるから、これを引用する。
1. 原判決八枚目表八行目「三七万八二二八円」とあるを「三七万七二二八円」と訂正し、同九枚目表六行目「利息」の次に「年」を挿入し、同枚目裏三行目「同年」とあるを「昭和五八年」と訂正する。
2. 同一〇枚目裏四、五行目「関係にある」を「関係にあり、連帯保証人相互間においては、各連帯保証人は、自己の負担部分を超過する弁済が求償権発生の要件ないしその範囲の限度とされている趣旨に鑑みれば、自己の負担部分については主たる債務者に対する求償のみで満足すべきものであり、反面また右負担部分については他の連帯保証人にかかわりなく主債務者から求償を得ることができる」と改める。
3. 同一〇枚目裏九行目「及ぼさない」から一一枚目「行目の「証拠もないので、」までを「及ぼさないというべきである。被控訴人と渕上徳子との間に成立した前示相殺契約は、被控訴人の渕上に対して有する債権額を一二三二万五八六三円にまで減少させるものであるが、右残額はなお被控訴人の控訴人に対する本訴求償債権額をこえる関係にあるから、被控訴人は控訴人と関係なく(すなわち控訴人に対する本訴求償債権額を減少せしめることなく)、右相殺処理により主債務者である渕上から、代位弁済金のうち被控訴人の負担部分について、その内入償還を受けたものということができる。
控訴人は、渕上が被控訴人に対し有していた反対債権は、渕上の福岡相互銀行からの借入の担保たる性質を有していたものであるから、その支払は当然控訴人の負担部分に充当さるべきであるとか、被控訴人の負担部分に充当するのは信義則に反するなどと主張するが、そのように解すべきでないことは以上によって明らかというべきである。そうすると、」と改める。
二、よって、原判決は相当で、本件控訴は理由がないのでこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 蓑田速夫 裁判官 柴田和夫 亀川清長)